« 曇 | Start | 腹黒度チェック »

06/17/2004

ウィリス『犬は勘定に入れません』

SFを読む。大学で講義の合間に読んでいい種類の本かどうかはやや疑問だが、読みかけの本は読むべきでもあると信じるので。案の定後輩(ではもうないが)に見つかって、冷笑される。「哲学的なSFですか」と言われてもなあ。もちろん、時空連続性について考える可能性もあるし、タイムトラベルということは論理的に理解可能かどうかを考えることもできるかも知れない。でも、わたしは昼休みに、ただ本を読みたいのだ。

このお話は2057年のオクスフォード大学史学部(んなものあるのかは知らない)と、19世紀のヴィクトリア朝時代のイングランドが舞台である。2075年にはすでにタイムマシンが発明されているのだが、このタイムマシンではものは何も運べないことが証明されてしまい、それ以来歴史家の研究目的以外では利用されていない。そのタイムマシンを使ったプロジェクトが第二次大戦中に破壊された教会の完璧なる修復で、たった一つ欠けた「主教の鳥株」を探すために学生が皆駆り出されている。主人公は時間移動のしすぎで、ジェットラグならぬタイムラグに罹ってしまう。けれども、プロジェクトのボスに見つかると休養もできない。そこで、19世紀に逃げ込むことにしよう、となるのだが…。

時空間の構造がカオス的であり、弱い相関関係が影響してくる一方、システム全体が緩くできているために、歴史には修復機能が備わっている、という設定は中々面白い。そういう歴史の中では、エージェントは中である程度の自由を行使することはできる(各個人の小さな行為も歴史に影響する)、けれども流れの大勢は基本的に決まっていて、それから逸脱するエージェントの行為も緩いシステムの中で修復されていく。こういう歴史が想定可能であるとすれば、人間が意図的な行為を行なう余地を残しながら、動物として世界の因果にも従っている、という極めて常識的だけれども、整合的な意見に収斂し難い考えが維持できそうな気がする…と言い返したら、後輩は感心したかな。

ちなみに、この本のタイトルはジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男: 犬は勘定に入れません』(邦訳:『ボートの三人男』丸谷才一(訳)。中公文庫)の副題から来たもので、この三人男も登場する。

  • コニー・ウィリス『犬は勘定に入れません: あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』大森望(訳)。早川書房、2004年。2800円。

  • |

    « 曇 | Start | 腹黒度チェック »

    Kommentare

    Kommentar schreiben



    (Wird nicht angezeigt.)




    TrackBack

    TrackBack-Adresse für diesen Eintrag:
    http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30752/786531

    Folgende Weblogs beziehen sich auf ウィリス『犬は勘定に入れません』:

    « 曇 | Start | 腹黒度チェック »